見えないものを見るにはどうしたらよいでしょうか。一見矛盾していますが、イベント ホライズン テレスコープ チームはまさにこれに取り組み、M87と呼ばれる銀河の中心にある超巨大ブラックホールの画像を撮影することに成功しました。イベント ホライズン テレスコープ チームは8台の電波望遠鏡のネットワークを使って、地球と同じ大きさの仮想望遠鏡を作りましたが、そのすべての生データを世界を魅了する画像に変えるには、ケイティ・バウマン博士が作成した独自の高度なアルゴリズムが必要でした1。
イベント ホライズン テレスコープ チームは、包摂(インクルージョン)と多様性(ダイバーシティ)の力の実例です。望遠鏡自体が8つの異なる観測点で構成されているだけでなく、多様なメンバーからなるチームが各メンバーの全面的な参加と尽力によって成し遂げた大きな進歩を、重要な役割を担った科学者である若き女性コンピューターサイエンティストが象徴しています。バウマン博士自身が米CNNに語ったように、「誰も1人では成し得なかったことです。様々なバックグラウンドを持った多くの人がいたからこそ、うまくいきました」2
多様性が大切
バウマン博士は、単に政治的に正しいセリフを言っただけではありません。あらゆる種類の組織が、多様性には事業を展開する地域社会やサービスを提供する顧客の構成を反映する以上の意味があることを認識しつつあります。多くの分析やその結果であるデータセットが示すように、完全に取り入れられ、活用されると、競争上の優位性にもつながります。取締役会に少なくとも1人の女性がいる大企業は、そうでない企業を株価や収益性の面で大幅に上回っています3。マッキンゼーの多様性に関する最新のレポートによると、経営陣の民族的・文化的多様性が最も高い層に属する企業は、下位4分の1の層に属する企業に比べて、平均以上の収益性を達成する可能性が33%高いことが明らかになっています4。
STEM(科学・技術・工学・数学)分野の企業にとって、すべての社員を巻き込んだ包摂的で多様性のある職場は、社会を変える次のイノベーションを見つける鍵となります。Chemours(ケマーズ)社のピープル・ヘルスサービス担当シニアバイスプレジデントであるSusan Kelliherは、「未来の課題を解決し、世界を変えるソリューションを革新するには、相違の力と一人ひとりの独自性が必要です。すでに業界にいる人たちだけに頼るのではなく、解決すべき問題に新鮮な視点を与えてくれるような、地域、人種、性別、経験、ライフスタイルにおける様々な違いを持つ人々が必要なのです」